株式による配当金を得たいと考えている人にとって「高配当ETF」は非常に魅力的な投資手段です。「高配当ETF」と聞いて真っ先に名前が挙がるのがSPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)です。
配当利回りの高さと手軽さから、投資初心者からFIREを目指す中上級者まで幅広い支持を集めています。この記事では、SPYDの特徴、配当利回り、メリット・デメリットを徹底解説し、VYM・HDV・SCHDなど人気ETFとの違いもわかりやすく比較していきます。
今回の記事はこんな方にオススメ
- 高配当銘柄選びに悩んでいる人
- 米国株に興味がある人
目次
1. SPYDとは?
SPYD(正式名称:SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)は、アメリカの資産運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)が運用する高配当株ETFです。ティッカーシンボル「SPYD」でNYSE Arcaに上場しています。
このETFの最大の特徴は、S&P500構成銘柄の中から配当利回りが高い80銘柄を均等に組み入れるというルールに基づいて構成されていることです。リバランス(銘柄入れ替えと再配分)は年2回、1月と7月に実施されます。
【基本情報(2025年8月時点)】
- ティッカー:SPYD
- 運用会社:State Street
- 経費率:0.07%(非常に低コスト)
- 構成銘柄数:約80社
- 配当頻度:年4回(3月・6月・9月・12月)
- ベンチマーク:S&P 500 High Dividend Index
SPYDは高配当を得たい投資家に人気のETFで、特に配当金生活を目指す人やFIREを目指す人たちの間で注目を集めています。
2. SPYDの配当利回りの魅力
SPYDの最大の魅力は、高い配当利回りです。
他の有名なETFであるVYMやHDVと比べても、利回りが安定して高水準(概ね4〜6%)を維持しています。
【配当利回りの比較(2025年実績ベース・概算)】
- SPYD:約4.9〜5.2%
- VYM:約2.8〜3.1%
- HDV:約3.5〜4.0%
このように、インカム(配当収入)重視の投資家にとって、SPYDの利回りの高さは大きな魅力です。
特に、再投資せずに配当金を生活費に充てたい方にとっては、非常に有力な選択肢となります。
3. SPYDの構成銘柄とセクター比率
SPYDは均等加重型ETFのため、構成銘柄1つ1つの比率がほぼ同じです(約1.2〜1.4%ずつ)。
つまり、特定銘柄に依存せずにリスク分散がされているのがポイントです。
【主な構成銘柄(2025年7月時点)】
- AT&T(T)
- Altria Group(MO)
- Chevron(CVX)
- 3M(MMM)
- Kinder Morgan(KMI) など
【セクター比率の傾向】
- 不動産(REIT)
- エネルギー
- 公益
- 金融
- 一部生活必需品・通信
セクター偏重には注意が必要で、景気敏感な業種や成熟企業が中心となるため、景気後退局面では株価が下がりやすい一面もあります。
4. SPYDのメリットとデメリット
▶SPYDのメリット
①高配当利回りで安定したキャッシュフローを得られる
SPYDの配当利回りはおおむね4.5〜6%の範囲で推移しており、VYM(2〜3%台)、HDV(3%台)などと比較しても高水準です。
仮に年間5%の配当利回りがあれば、1,000万円の投資で年間50万円の配当金を受け取ることができます。これは家賃や生活費の補填に使える非常に魅力的な水準です。
②経費率が極めて低い(0.07%)
SPYDの経費率は0.07%と非常に低コストです。投資信託や他のETFと比較しても、保有コストがほとんどかかりません。
長期保有を前提とするETFでは、経費率の差がパフォーマンスに直結するため、これは大きなメリットといえます。
③銘柄を均等に保有するリスク分散効果
SPYDは80銘柄に均等加重で投資する設計のため、1銘柄の比率が高くなることがなく、個別企業の倒産や業績悪化による影響を最小限に抑えることができます。
時価総額加重型ETF(VYMなど)と比較すると、特定の大型株に依存しないという点で、偏りの少ない分散投資が可能です。
④配当金が年4回受け取れる(3・6・9・12月)
SPYDは四半期ごとの分配金を支払っており、年4回の安定的なインカムが得られます。これにより、生活費や再投資のタイミングを柔軟に調整しやすい点も評価されています。
⑤NISAと相性が良い
2024年から始まった新NISAでは、配当金も非課税対象となっています。SPYDのような配当重視のETFは、NISA口座で保有することで最大限のメリットを享受できます。
(※米国課税10%は免除されない点は要注意)
▶SPYDのデメリット
①株価が不安定で値下がりリスクがある
SPYDは高配当株にフォーカスしているため、業績が低迷して株価が割安になった企業が含まれる傾向があります。
これにより、景気悪化時や金利上昇局面では、株価の下落リスクが高まるという特徴があります。特に2020年のコロナショックでは、SPYDは約50%の下落を経験し、他のETFより回復が遅れました。
②セクターの偏り(エネルギー・REIT・金融)
配当利回りが高い銘柄は、エネルギー・不動産(REIT)・金融など景気敏感セクターに集中する傾向があります。
その結果、SPYDは特定のセクターに偏ったポートフォリオとなりやすく、分散の効き目が弱まることもあります。
③成長性の乏しい企業が多い
SPYDの構成銘柄には、成長よりも配当を重視する成熟企業が多く含まれています。
そのため、キャピタルゲイン(値上がり益)を狙いたい投資家には不向きで、トータルリターンはVTIやSCHDに劣ることも珍しくありません。
④リバランスが年2回のみ
SPYDは年に2回(1月と7月)しか構成銘柄の入れ替えや再加重を行いません。
そのため、急激な業績悪化や無配転落企業が放置されやすく、短期的な損失を抱えるリスクも一定あります。
5. 他の高配当ETFとの比較(VYM、HDV、SCHDなど)
SPYD以外に魅力的な米国ETFは存在し、それらと比較した表が下記になります。
| ETF名 | 配当利回り | 経費率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SPYD | 4.9〜5.2% | 0.07% | 高配当・均等加重型・REIT多め |
| VYM | 2.8〜3.1% | 0.06% | 配当+成長バランス型・大型株中心 |
| HDV | 3.5〜4.0% | 0.08% | 財務健全性重視・生活必需品多め |
| SCHD | 3.2〜3.6% | 0.06% | 増配実績重視・成長も狙える |
このように、SPYDは配当利回りの高さで選ばれがちですが、株価の値動きには注意が必要です。
一方で、安定性重視ならHDV、トータルリターン重視ならSCHDやVYMの方が適しています。
6. SPYDが向いている人・向いていない人
それぞれ特徴が異なる米国ETFですが、SPYDが向いている人と向いていない人の特徴は以下となります。
▶SPYDが向いている人
①配当金で生活の一部を補いたい人
定期的な現金収入を重視し、生活費の一部に配当金を充てたい人にとって、SPYDの四半期ごとの分配金は非常に使い勝手が良いです。
例:毎月の支出の一部(家賃・光熱費など)を配当でカバーし、サイドFIREや副収入の柱として活用したい方。
②高配当株を自分で選ぶのが難しいと感じる初心者
高配当個別株は、減配・無配や倒産などのリスクがあります。SPYDは高配当銘柄を自動で分散投資してくれるため、初心者にとってはリスクコントロールがしやすい選択肢です。
③資産の増加より「安定収入」を重視する人
将来的な大きな値上がりよりも、安定したインカム収入を最優先にしたいという方には、SPYDの投資哲学がマッチします。
④NISA口座で運用するETFを探している人
NISA枠を配当重視のETFに使いたい人にとって、SPYDは低コストかつ高利回りで理想的です。
▶SPYDが向いていない人
①株価の値上がり(キャピタルゲイン)を重視したい人
SPYDは構成銘柄に成長株がほとんど含まれていないため、株価の上昇による利益(キャピタルゲイン)は限定的です。
値上がり益で資産を増やしたい方は、VTIやSCHDなどの成長性も加味したETFが適しています。
②配当よりもトータルリターンを重視する人
SPYDは配当は多いが株価が伸びにくい傾向にあります。トータルの利回りではVYMやHDV、さらには米国株インデックスファンドに劣る場面もあります。
③景気後退や金利上昇に敏感なセクターが気になる人
SPYDは不動産・エネルギー・金融などに偏るため、景気サイクルや金利変動に敏感な銘柄が多いです。
守りの資産を求める人には、よりディフェンシブなETF(HDVなど)が向いているでしょう。
④短期間で成果を求める人
SPYDは長期保有が前提のETFです。短期間で株価上昇や大きなリターンを期待する人にとっては、思ったより退屈でストレスの多い投資商品かもしれません。
7. SPYDの買い方・NISAとの相性
日本の証券会社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)では、SPYDを米国ETFとして購入可能です。
- 単位:1株から購入可能
- 買付通貨:米ドル(円貨決済も可能)
- 購入方法:成行・指値注文可、積立投資も対応(一部証券)
▶NISAでの運用はおすすめ?
SPYDは分配金の非課税メリットを享受できるため、成長投資枠や旧つみたてNISAでも運用可能です。
ただし、米国源泉税10%は非課税対象外なので注意が必要です。
8. まとめ
SPYDは、高配当・低コスト・均等分散という特徴を持ち、配当金生活を目指す方にとって非常に魅力的なETFです。
ただし、セクター偏重や株価の不安定さといったリスクもあり、他のETFとの組み合わせや長期視点での投資戦略が重要です。
投資目的が「配当による安定収入」であるなら、SPYDは有力な一手となるはずです。


