投資初心者の方や、配当金でFIRE(経済的自立・早期退職)を目指している方にとって、「高配当ETF」は非常に魅力的な投資手段です。その中でも、iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF(HDV)は、安定性と分配金利回りのバランスが取れた優良ETFの一つです。
本記事では、HDVの基本情報から、構成銘柄、配当利回り、投資メリット・デメリットまで徹底解説します。また、人気の高配当ETFであるVYM、SPYD、SCHDとも比較していきます。
今回の記事はこんな方にオススメ
- 不労所得を得てFIREを目指している人
- 米国高配当ETFの違いを知りたい人
目次
1. HDVとは?基本情報と特徴
▶HDVの基本データ(2025年7月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | iShares Core High Dividend ETF |
| ティッカー | HDV |
| 運用会社 | ブラックロック(BlackRock) |
| 設定日 | 2011年3月 |
| 経費率 | 0.08% |
| ベンチマーク | Morningstar Dividend Yield Focus Index |
| 分配金支払頻度 | 年4回(3月・6月・9月・12月) |
| 組入銘柄数 | 約75銘柄 |
▶HDVの特徴
- 高い配当利回り:歴史的に約3〜4%前後の配当利回りを維持
- クオリティ重視の銘柄選定:モーニングスターの「財務的健全性スコア」が高い企業のみを採用
- セクターに偏りがある:公益・エネルギー・ヘルスケアへの集中傾向
▶HDVが選ばれる理由
HDVは、配当利回りの高さに加えて、財務の安定性を重視したポートフォリオが魅力です。特に株式市場が不安定な局面でも、ディフェンシブな銘柄群が価格下落を抑える可能性があります。
2. HDVの構成銘柄とセクター比率
HDVの構成は、時期によって変動がありますが、代表的な上位銘柄とセクター構成は以下のとおりです。
▶代表的な上位構成銘柄(例:2025年7月時点)
| 銘柄名 | セクター | 構成比率(目安) |
|---|---|---|
| Exxon Mobil(XOM) | エネルギー | 約7% |
| Johnson & Johnson(JNJ) | ヘルスケア | 約6% |
| Verizon Communications(VZ) | 通信 | 約5% |
| Chevron(CVX) | エネルギー | 約5% |
| Procter & Gamble(PG) | 生活必需品 | 約4% |
▶セクター別構成比率
| セクター | 比率(目安) |
|---|---|
| エネルギー | 約25% |
| ヘルスケア | 約20% |
| 通信 | 約15% |
| 生活必需品 | 約15% |
| 公益事業 | 約10% |
| その他 | 約15% |
HDVはテクノロジーや金融セクターの比率が少なくエネルギー、通信、生活必需品など景気変動の影響を受けにくい銘柄で構成されているため安定したETFとなります。
3. HDVの配当利回りと増配実績
▶配当利回りの推移
HDVの過去の年間配当利回りは概ね以下のとおりです。
- 2021年:約3.5%
- 2022年:約3.9%
- 2023年:約4.0%
- 2024年:約3.8%
- 2025年(予想):約3.7%
定期的な分配金が魅力で、再投資や配当金生活を視野に入れる投資家にとっては安定したインカム源となります。
▶増配傾向の評価
HDVは毎年必ず増配しているわけではありませんが、長期的には安定した配当水準を維持しています。SPYDのように利回り重視で変動が大きいETFに比べ、やや控えめながらも安定的です。
4. VYM・SPYD・SCHDとの比較
高配当ETFにはHDVの他にも、VYM(バンガード・米国高配当株ETF)、SPYD(SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF)、SCHD(シュワブ米国配当株式ETF)といった人気銘柄があります。それぞれの特徴や違いを比較し、HDVのポジションを明確にしていきましょう。
▶基本スペック比較表(2025年7月時点)
| 項目 | HDV | VYM | SPYD | SCHD |
|---|---|---|---|---|
| 経費率 | 0.08% | 0.06% | 0.07% | 0.06% |
| 配当利回り | 約3.7% | 約3.2% | 約4.5% | 約3.5% |
| 銘柄数 | 約75 | 約450 | 約80 | 約100 |
| ベンチマーク | Morningstar Dividend Yield Focus | FTSE High Dividend Yield | S&P 500 High Dividend | Dow Jones U.S. Dividend 100 |
| 分配金頻度 | 年4回 | 年4回 | 年4回 | 年4回 |
| 設定年 | 2011年 | 2006年 | 2015年 | 2011年 |
▶特徴の比較
- HDV:財務健全性を重視したディフェンシブな銘柄が中心。エネルギーやヘルスケアの比重が高い。
- VYM:分散性に優れており、幅広いセクターに分配。成長性も一定程度確保。
- SPYD:高配当銘柄上位80社に均等配分。配当利回りは高いが価格変動も大きめ。
- SCHD:増配実績や財務指標に基づく選定で、成長とインカムを両立。近年特に人気が高い。
▶どのETFがどんな人に向いている?
| 投資タイプ | 向いているETF |
|---|---|
| 安定収入重視、景気変動に強いポートフォリオが欲しい | HDV |
| とにかく高利回りを狙いたい | SPYD |
| 長期での増配・成長性を重視 | SCHD |
| 幅広い業種に分散して安定した成長を期待 | VYM |
投資目的や投資タイプで向いているETFが異なるので、自分の投資スタイルを明確にして適したETFを選択しましょう。
5. HDVのメリットとデメリット
▶HDVのメリット
①配当の安定性
モーニングスターの財務健全性評価を取り入れているため、財務的に信頼できる企業が多く構成されています。
②景気敏感株を避けた構成
テクノロジーや金融の比重が低く、ディフェンシブなセクター中心のポートフォリオが魅力です。
③高すぎない経費率
経費率0.08%と十分に低水準で、長期保有にも適しています。
▶HDVのデメリット
①銘柄数が少なめでセクター偏重
エネルギーや通信株などに偏っており、市場全体の回復局面では出遅れる可能性があります。
②爆発的な成長は期待しにくい
成長株やテック株がほとんど含まれていないため、キャピタルゲインよりインカム重視向けです。
③増配率はSCHDに劣る
配当利回りは高めでも、毎年の増配にはややばらつきがあります。
6. HDVとNISAの相性
2024年からスタートした新NISA制度では、成長投資枠とつみたて投資枠の2種類があります。HDVは成長投資枠で購入可能なETFです。
▶HDVをNISAで保有するメリット
- 配当金に対する日本の課税(約20%)が非課税になる
- 長期保有によるインカムゲイン最大化に最適
- 為替差益も含めて運用益全体が非課税対象
▶注意点
ただし、米国株ETFの配当には現地源泉徴収税(10%)が課されるため、これを完全に非課税にはできません。確定申告での「外国税額控除」により、一部は取り戻せます。
7. HDVの最新チャートとパフォーマンス(2025年7月時点)
HDVは長期的に安定したパフォーマンスを維持してきたETFです。2025年7月時点での株価チャートやトータルリターンは以下のとおりです。
▶HDVの株価推移(過去5年間)
| 年 | 年初株価(USD) | 年末株価(USD) | 年間騰落率 |
|---|---|---|---|
| 2020 | 約95 | 約86 | -9.5%(コロナ影響) |
| 2021 | 約86 | 約101 | +17.4% |
| 2022 | 約101 | 約100 | -1.0%(利上げ・インフレ影響) |
| 2023 | 約100 | 約108 | +8.0% |
| 2024 | 約108 | 約112 | +3.7% |
※配当を含めたトータルリターンで見ると、年平均リターンは約6〜7%前後と推定されます。
▶HDVのボラティリティと相場耐性
- コロナショックやインフレ局面でも大きな下落を抑えた安定感
- 成長株中心のETF(QQQなど)に比べて値動きが緩やか
- 長期保有であれば大きな安心感を得やすい
▶配当再投資によるリターンの向上
配当を受け取って再投資を続けることで、複利効果によってさらにパフォーマンスが高まります。安定配当+再投資は、FIREや資産形成戦略において非常に効果的です。
8. HDVはどんな人に向いているか?
HDVはどのような投資家に適しているのでしょうか?以下の特徴をもとに、向いているタイプを整理します。
▶向いている投資家タイプ
①配当収入を安定的に得たい人
⇒ 四半期ごとの分配金がしっかり得られ、リタイア後の生活資金にも◎
②FIREを目指す人・セミリタイア志向の人
⇒ ポートフォリオのコア資産として組み込めば、安定収入の柱になります。
③投資初心者・リスクを抑えたい人
⇒ ハイテクや成長株の比率が低く、ボラティリティも低いため安心。
④NISAを活用してインカム投資をしたい人
⇒ 日本の税制優遇と米国ETFの安定配当の相乗効果が期待できます。
▶向いていない投資家タイプ
①短期間で大きな値上がり益を狙う人
⇒ テクノロジー株や小型株中心のETFの方が適しています(例:QQQ、ARKKなど)
②成長性のある企業への投資を重視する人
⇒ HDVはあくまで「高配当&財務健全性」が軸であり、成長は控えめです。
9. まとめ
HDVは、高配当ETFの中でも「安定性」と「財務健全性」を重視する投資家にとって、非常に優れた選択肢です。特に、FIREを目指す人や、配当金での生活設計を立てたい人にはピッタリのETFといえるでしょう。
もちろん、SPYDやSCHD、VYMといった他のETFと比較しながら、自分に合った投資スタイルを見つけることも大切です。HDVをうまく活用し、インカムゲインを味方にした長期安定投資をぜひ実現してください。


