株式投資において、「高配当株」と「株主優待株」は特に人気のある投資対象です。
どちらも企業からの「見返り」があるという点では共通していますが、その内容や投資スタンスには大きな違いがあります。
定期的な現金収入を重視する人には高配当銘柄が魅力的に映る一方、実生活で使えるお得な優待を楽しみたい人には株主優待銘柄が支持されています。
この記事では「高配当株 vs 株主優待株」というテーマで、両者の違いを明確にしながら、投資判断に役立つ情報をわかりやすく解説していきます。
今回の記事はこんな方にオススメ
- 高配当株と株主優株どちらに投資しようか悩んでいる人
- 高配当株と株主優株の違いを知りたい人
目次
1. 高配当銘柄とは?
株式投資の魅力のひとつに「配当金」があります。企業が得た利益の一部を株主に分配する制度であり、特に定期的に収益を受け取れる高配当株は、多くの投資家から人気を集めています。
▶配当金とは?
配当金とは、企業の利益の一部を株主に分配する金銭のことです。上場企業の多くは年1回または年2回の決算時に、配当金を支払っています。保有株数に応じて受け取れる金額が増えるため、長期保有を前提とした「インカムゲイン(安定収入)」目的の投資戦略に適しています。
▶高配当株の定義
明確な基準はありませんが、一般的に配当利回りが3%〜4%以上の銘柄は「高配当株」とされます。配当利回りとは、株価に対する配当金の割合を示す指標で、以下の計算式で求められます。
▶配当利回り(%)=(年間配当金 ÷ 株価)× 100
たとえば、株価が2,000円で年間配当金が80円の場合、配当利回りは4%となります。
▶なぜ高配当株が人気なのか?
特に近年、以下のような理由から高配当株への注目が高まっています。
- 老後の安定収入源として:年金だけに頼らない生活を目指す人が増加
- FIREムーブメント:不労所得で早期リタイアを目指す人にとって魅力的
- 低金利時代の代替資産:銀行預金よりも利回りが高い
こうした背景から、高配当株は「資産を守りながら増やす」堅実な投資先として評価されています。
▶日本と米国の違い
日本株と米国株の高配当銘柄には、いくつかの違いがあります。
| 特徴 | 日本株 | 米国株 |
|---|---|---|
| 配当頻度 | 年1回または年2回 | 年4回(四半期ごと) |
| 増配の安定性 | 企業によって差が大きい | 増配企業が多い(例:連続増配50年以上の企業も) |
| 税制面 | 配当控除あり | 外国税額控除などの手続きが必要 |
米国株では「連続増配企業」や「高配当ETF(例:VYM、HDV、SPYD)」への投資も人気で、配当を軸にした資産形成がしやすい環境が整っています。
2. 株主優待銘柄とは?
株主優待とは、企業が自社の株を保有している株主に対して、感謝の意を込めて「モノ」や「サービス」を贈る制度です。特に日本では非常に人気が高く、株式投資の大きな楽しみのひとつとなっています。
▶株主優待とは何か?
株主優待とは、企業が定めた基準日に一定数以上の株式を保有している株主に対して、自社商品や割引券などを贈呈する制度です。一般的には年1回または2回の頻度で実施され、内容や対象株数は企業ごとに異なります。
たとえば、100株以上保有している株主に対して、年間で3,000円分のクオカードや商品詰め合わせなどが贈られるといった例がよく見られます。
▶優待内容の種類
株主優待の内容は実に多彩で、主に以下のような種類に分類されます。
- 自社製品:お菓子、食品、日用品など(例:JTの食品セット)
- 割引券・金券類:クオカード、ギフト券、自社サービスの割引券(例:すかいらーくのお食事券)
- カタログギフト:複数の選択肢から好きな品を選べる(例:KDDIの「au PAYマーケット」優待)
- 地域特産品:地方企業による地元の特産品(例:地方銀行系企業など)
- 体験・サービス系:映画鑑賞券、遊園地入場券、宿泊施設割引など
優待によっては実生活に役立つものも多く、「実質的な生活費の節約」として重宝されることがあります。
▶日本で優待が多い理由
株主優待制度は主に日本特有の文化ともいえる制度で、海外、特に米国ではほとんど見られません。その背景には以下のような理由があります。
- 個人投資家の比率が高い:日本では個人投資家が多数を占めるため、優待で関心を引きやすい
- 企業の株主還元姿勢:利益を配当だけでなく優待でも還元したいという企業の姿勢
- 生活実感に直結する魅力:配当金よりも「モノ」でのリターンに親しみやすさがある
また、投資初心者にとって「好きな企業の商品がもらえる」というメリットは心理的ハードルを下げる要因にもなっています。
▶優待利回りの考え方
株主優待の価値を数値化する際には、「優待利回り」という指標を用いることがあります。これは配当利回りと同様、株価に対して優待の金額的価値がどれだけあるかを示すもので、以下のように計算されます。
▶優待利回り(%)=(年間優待価値 ÷ 株価)× 100
たとえば、株価2,000円の銘柄で、年間3,000円分の優待がもらえる場合、優待利回りは1.5%となります。これに配当利回りを加えた「総合利回り(配当+優待)」で判断する投資家も多いです。
3. 高配当株のメリット・デメリット
高配当株は、安定したインカムゲイン(配当収入)を得られる点で非常に人気のある投資先ですが、その一方でリスクや注意点も存在します。ここでは、高配当銘柄のメリット・デメリットを具体的に見ていきましょう。
▶高配当株のメリット
①定期的な現金収入が得られる
高配当株の最大の魅力は、定期的に現金を受け取れることです。保有株数に応じて配当金が支払われるため、投資額が増えるほど「不労所得」の額も大きくなります。
- 例:年間配当80円の株を1,000株保有 → 年間8万円の配当
- 退職後の生活資金や副収入として活用しやすい
配当金は再投資にも回せるため、長期的な資産形成にも有効です。
②資産の安定性が高い
高配当株の多くは成熟企業であり、景気変動に左右されにくい特徴があります。金融、エネルギー、通信、不動産などの業種が多く、株価が比較的安定しやすい傾向にあります。
③投資判断がしやすい
配当利回りという明確な数値があるため、投資判断がしやすいというメリットもあります。配当性向や業績推移と合わせて分析することで、リスク管理もしやすくなります。
▶高配当株のデメリット
①減配・無配のリスク
最も注意したいのが減配や無配への転換です。企業の業績悪化や経営戦略の変更により、突然配当が減らされたり廃止されることもあります。
- 例:コロナ禍で航空業界やレジャー関連株が相次いで無配に転落
- 企業の配当方針(連続増配・安定配当・業績連動など)を事前に確認することが重要
②成長性が低いケースが多い
高配当株は成熟企業が多いため、株価の成長性(キャピタルゲイン)に乏しいことがしばしばあります。株価が上がらなければ、トータルのリターンは配当だけになってしまう可能性もあります。
③税金の影響を受けやすい
配当金には20.315%の税金がかかります(所得税・住民税の合計)。たとえば、年間10万円の配当を受け取った場合、実際の手取りは約8万円程度に減ります。
- 課税口座での運用では、利回りが実質的に低下
- NISA口座での非課税活用が有効
4. 株主優待株のメリット・デメリット
株主優待株は、配当金とは別に「モノ」や「サービス」がもらえるユニークな制度で、特に日本の個人投資家に人気があります。
しかし、こちらも魅力だけでなく注意点がありますので、メリット・デメリットの両面から見ていきましょう。
▶株主優待株のメリット
①日常生活で使える「お得」な優待がもらえる
株主優待は、日用品・外食・サービス割引など、生活に直結したメリットが多く、実感しやすい点が特徴です。
- 例:すかいらーく(3197)…食事優待券が年2回(100株で年間4,000円分)
- 例:イオン(8267)…キャッシュバックや割引が受けられる「株主カード」
実際に自分の生活圏内で利用できる企業の優待を受け取ることで、投資による「リターン」がより実感しやすくなります。
②投資の楽しみが増える
株主優待は、「自分へのご褒美」や「サプライズ」のような感覚があり、投資そのものが楽しくなるという面もあります。家族と一緒に届いた優待を楽しめる点も、特に長期保有の動機につながります。
③長期保有で優待内容がグレードアップする銘柄も
近年では、長期保有特典を設ける企業が増えています。数年以上保有している株主には、通常よりも価値の高い優待が提供されるケースもあります。
- 例:KDDI(9433)…5年以上の保有でカタログギフトがグレードアップ
- 例:オリックス(8591・※2024年に優待制度廃止)…3年以上保有で優待内容が拡充
▶株主優待株のデメリット
①優待廃止や改悪のリスク
優待制度は企業の任意であり、いつでも変更・廃止が可能です。特に近年はコスト削減やガバナンス強化の流れから、優待の廃止を発表する企業が増えています。
- 例:オリックス(8591)…長年人気を博していた優待を2024年に廃止
- 廃止発表と同時に株価が大きく下落するケースも
②実質的な利回りが把握しづらい
配当金と違い、優待の金銭的価値は主観に左右されるため、利回りの計算が難しい場合があります。たとえば自分が使わない優待であれば、たとえ高額でも意味がありません。
- 金券やクオカードなど換金性の高い優待が「人気化」しやすい理由のひとつ
③海外投資家には評価されにくい
株主優待制度は主に日本特有のものであり、海外投資家には理解されにくいのが現状です。そのため、海外勢からの資金流入が少なく、株価が上がりにくい一因となることもあります。
④分散投資が難しくなる可能性
優待内容によっては最低単元(通常100株)での投資が必要なため、限られた資金では多くの優待銘柄に分散しにくいという側面もあります。
5. 代表的な高配当株・株主優待株
高配当株や株主優待株を選ぶ際には、実際に人気のある銘柄や安定的な実績のある企業を知っておくことが非常に重要です。この章では、日本市場で代表的な高配当銘柄と株主優待銘柄の実例をご紹介します。
※配当利回り・優待内容などは2025年7月時点の情報を想定しており、最新情報は証券会社やIRサイト等をご確認ください。
▶代表的な高配当株(配当利回り3〜5%以上)
①日本たばこ産業(JT・2914)
- 配当利回り:約4.5%
- 事業内容:たばこ・医薬・食品など
- 特徴:配当性向が高く、安定配当を長年継続中。政府が大株主という点でも信頼感がある。
- 注意点:ESG投資(環境・社会・ガバナンス)から除外されやすいセクター。
②三菱HCキャピタル(8593)
- 配当利回り:約4.6%
- 事業内容:リース・ファイナンス業
- 特徴:連続増配実績があり、財務も安定。中長期での安定保有に適する。
③ENEOSホールディングス(5020)
- 配当利回り:約4.3%
- 事業内容:石油・エネルギー事業
- 特徴:原油価格に左右されるが、安定配当を継続。PBR割安で評価されやすい。
④みずほフィナンシャルグループ(8411)
- 配当利回り:約4.2%
- 事業内容:メガバンク
- 特徴:低金利環境でも安定した収益基盤。2024年以降、株主還元の強化を打ち出している。
▶代表的な株主優待株(人気・実用性の高い銘柄)
①KDDI(9433)
- 最低投資金額:約45万円(100株)
- 優待内容:全国の名産品が選べるカタログギフト(3,000円相当〜)
- 特徴:配当利回りも3%前後とバランスが良く、長期保有優遇制度もある。
②イオン(8267)
- 最低投資金額:約33万円(100株)
- 優待内容:「イオンオーナーズカード」で買い物金額の3%キャッシュバックなど
- 特徴:生活圏にイオンがある人にとって非常に実用的。
③すかいらーくホールディングス(3197)
- 最低投資金額:約18万円(100株)
- 優待内容:食事優待カード(年間最大4,000円分)
- 特徴:ファミリーレストラン系が対象。家族利用で人気が高い。
④日本管財(9728)
- 最低投資金額:約25万円(100株)
- 優待内容:カタログギフト(年2回、各2,000円相当)
- 特徴:優待+配当で総合利回りが高く、長期保有で内容がグレードアップ。
▶総合利回りで比較する方法もおすすめ
高配当株・優待株の選定では、「配当利回り+優待利回り」で総合利回りを比較する方法も有効です。
たとえば、KDDIのように配当利回りが3%、優待利回りが1.5%ある場合、総合利回りは約4.5%となり、単純な高配当株と同等レベルの魅力を持つことになります。
6. 高配当株と株主優待株、どちらを選ぶべきか?
高配当株と株主優待株はどちらも魅力的な投資対象ですが、「どちらが良いか?」という問いに対する答えは、投資家一人ひとりの目的・資金・生活スタイルによって異なります。この章では、それぞれのタイプに合った選び方のポイントをご紹介します。
▶ライフスタイルと投資目的で考える
①高配当株が向いている人
- 老後の生活資金や副収入を確保したい
- インカムゲイン(配当収入)で安定した現金収入が欲しい
- 企業分析や財務情報を見るのが好き
- 海外株やETFも含めて幅広く運用したい
②株主優待株が向いている人
- 日常生活でお得に楽しみたい
- 初心者で、まずは投資に慣れたい
- 家族と一緒に優待を楽しみたい
- 配当よりも「モノ」や「サービス」に価値を感じる
投資の「楽しさ」や「モチベーション」を重視する人は、優待株から始めてみるのも良いでしょう。一方、資産形成やFIRE(経済的自立・早期リタイア)を目指す場合は、配当再投資が可能な高配当株の方が効率的です。
▶長期保有か、キャピタルゲイン狙いか?
高配当株も優待株も、長期保有を前提とすることで効果を最大化できます。
- 長期保有によって「複利効果」が期待できる(高配当株)
- 優待のグレードアップ制度などの恩恵が受けられる(優待株)
ただし、キャピタルゲイン(株価上昇)を狙いたい場合は、どちらもやや不向きです。高配当株や優待株は成長性よりも安定性を重視する企業が多いため、株価の値上がりは限定的となる傾向があります。
▶家族名義で優待を分散保有する戦略も
株主優待は多くの場合、「100株以上を保有する株主」に対して一律で提供されます。つまり、家族で複数名義に分散することで、優待を重複して受け取ることが可能です。
- 例:夫婦で100株ずつ保有 → 優待を2人分受け取れる
- 子どもの証券口座でも一定年齢以上であれば活用可能(※証券会社の規定を確認)
こうした工夫をすれば、同じ投資額でも実質的なリターンを最大化できる可能性があります。
▶併用するという選択肢もおすすめ
高配当株と株主優待株は「どちらか一方」ではなく、組み合わせてポートフォリオを構築するという考え方も非常に効果的です。
- 高配当株で安定した現金収入を得つつ、
- 優待株で生活に役立つ商品やサービスを楽しむ
たとえば、KDDIのように配当と優待の両方を提供している銘柄を中心に据えながら、ライフスタイルに応じて分散投資を行うことで、リスクを抑えつつ効率よくリターンを得ることができます。
7. NISAや税制との関係
株式投資を行う上で、税金の負担を抑える制度を上手に活用することは、最終的なリターンに大きな差をもたらします。特に2024年からスタートした新NISA制度は、高配当株・株主優待株の両方にとって強力な味方です。
▶新NISA制度とは?(2024年〜)
2024年に刷新された新NISA(少額投資非課税制度)は、以下のような特徴を持っています。
| 項目 | 新NISA制度の内容 |
|---|---|
| 対象口座 | 一人1口座(成長投資枠・つみたて投資枠の併用可能) |
| 非課税期間 | 無期限(売却しても枠は再利用可能) |
| 年間投資枠 | 最大360万円(つみたて枠120万円+成長投資枠240万円) |
| 生涯投資上限額 | 1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで) |
| 対象商品 | 上場株式、ETF、REIT、積立型の投資信託など |
これにより、配当金・譲渡益にかかる20.315%の税金が一切かからないため、高配当株や優待株の運用効率が格段にアップします。
▶高配当株×NISAの活用法
配当金は通常、特定口座などで保有していると20.315%の税金が引かれますが、NISA口座内であれば非課税でそのまま受け取ることができます。
- 例:年間配当10万円 → 通常は約8万円の手取り → NISAなら10万円まるごと受け取り
- 再投資する際の効率も非常に高い(複利効果)
特に、毎年一定の配当を受け取りつつ、長期で資産を積み上げたい人には、NISAは非常に相性の良い制度といえます。
▶株主優待株×NISAの活用法
株主優待に対しては税金がかからないため、「NISAで優待株を保有するメリットは少ない」と思われがちですが、実は以下の理由から相性は良好です。
- 優待株は長期保有が前提 → NISAの長期非課税メリットと一致
- 配当と優待の両方が得られる銘柄(KDDI、イオンなど)をNISA枠に入れれば、配当部分が非課税になる
- 将来売却益が出た際にも非課税
つまり、配当が少額であっても「優待+配当」型の銘柄をNISAで保有することで、総合的なメリットを最大化できます。
▶特定口座・配当控除との比較
NISAを使わず特定口座で高配当株を保有する場合、「配当控除」の制度を活用する方法もあります。ただし、以下のような違いがあります。
| 比較項目 | NISA口座 | 特定口座+配当控除 |
|---|---|---|
| 配当への課税 | 非課税(0%) | 課税後に確定申告で一部控除 |
| 手続きの手間 | 基本不要 | 確定申告が必要(所得額によって控除率が異なる) |
| 利便性 | 高い | 手間がかかることも |
NISA口座の活用により、非課税での資産形成を最優先にしたい人にとっては有利です。ただし、将来の収入や他の控除との兼ね合いも考慮する必要があります。
▶「優待クロス取引」や制度信用との相性
NISAでは一般信用取引(いわゆる「クロス取引」)ができないため、優待だけを狙った短期取引には向いていません。NISAで保有する場合は、「本当に長期保有したい企業」に絞って選ぶのが賢明です。
8. よくある誤解や注意点
高配当銘柄や株主優待銘柄への投資は、魅力的なリターンや楽しみを提供してくれる一方で、初心者が陥りやすい誤解や注意すべきポイントも多くあります。この章では、実際によくある誤解とその対処法について解説します。
▶「高配当=安全な株」ではない
高配当=安心・安定な企業と思い込んでしまうのは、非常に危険です。
実際には、株価が大きく下がったことで見かけの利回りが高くなっている「配当利回りの罠」の可能性もあります。
例:
- 株価が1,000円 → 配当が50円 → 利回り5%
- しかし、株価が急落して500円に → 配当は変わらず → 見かけ上10%に!
このような場合、業績悪化により配当が減配または無配になる可能性があります。利回りだけでなく、配当性向や業績推移も必ず確認しましょう。
▶「優待はずっともらえる」と思い込む
株主優待は企業の好意による制度であり、法的な義務はありません。そのため、以下のような事態も珍しくありません。
- 経営方針の変更により廃止
- コスト削減の一環として縮小
- 優待目的の個人株主対策の終了
実例:
- オリックス(2024年3月で優待制度終了)
- JT(2023年で優待制度廃止)
「この優待がもらえるから」と保有するのではなく、企業の本質的な価値や財務内容を見極める姿勢が必要です。
▶「配当利回り」だけで判断しない
高配当株において利回りは重要な指標ですが、それだけで判断するのは危険です。以下のような指標も合わせて確認することをおすすめします。
- 配当性向(利益のうち何%を配当に回しているか)
- 自己資本比率(財務の健全性)
- EPS(1株あたり利益)の推移
- 業績の安定性
たとえ利回りが高くても、配当性向が100%を超えているような企業は無理をしている可能性が高いため注意が必要です。
▶優待目当ての「クロス取引」のリスク
短期間だけ株を保有して優待だけをもらう「優待クロス取引」は節税面では有利に見えますが、次のようなリスクがあります。
- 逆日歩(ぎゃくひぶ)によるコスト増
- NISA口座では活用不可
- 制度変更や人気化による制度縮小・廃止
一見お得に見える優待投資も、十分な知識がないと損をすることがあるため、初心者は安易に手を出さないよう注意しましょう。
▶「優待目当ての分散投資」がかえってリスクに
株主優待を複数もらいたいという理由から、多くの優待株を保有する投資家もいます。しかし、以下のような落とし穴も。
- 管理が煩雑になる
- 低利回りや成長性の乏しい銘柄がポートフォリオに増える
- 優待廃止でモチベーションが下がる
投資はあくまで資産形成の手段であり、「モノをもらう」ことが目的化しないよう注意が必要です。
▶企業のIRや優待条件の見直しに注意
- 優待の「権利確定月」や「保有期間要件」が変わることがあります。
- 長期優遇制度を導入する企業も増えており、保有期間の確認が重要です。
必ず企業のIR情報や公式発表をチェックし、ルール変更に対応できるようにしましょう。
9. 結局どちらを選ぶべきか?
高配当銘柄と株主優待銘柄、それぞれに異なる魅力とリスクがあることを見てきました。では、実際に投資するにあたって「どちらを選ぶべきか?」という問いに対しては、一概に正解はありません。それぞれの投資スタイルや目的によって最適な選択が異なるからです。
ここでは、タイプ別にどちらが向いているのか、また両者をどう組み合わせるべきかを具体的に紹介していきます。
▶【タイプ別】向いているのはどっち?
①安定的な現金収入がほしい人 → 高配当銘柄
配当金は現金として受け取れるため、FIREを目指す人や老後の収入源を確保したい人に向いています。長期保有により、増配によるインカム向上も期待できます。
✅ 向いている人の例:
- リタイア後の収入源を作りたい
- 不労所得を構築したい
- キャッシュフロー重視の運用がしたい
②お得感や“楽しさ”を感じたい人 → 株主優待銘柄
株主優待は「モノでもらえるリターン」として、実感が得やすいのが魅力です。初心者や家族と楽しみながら投資をしたい人に適しています。
✅ 向いている人の例:
- 投資を楽しく始めたい初心者
- 家族で優待を楽しみたい
- 日常生活の節約に活用したい
③投資効率や成長も重視したい人 → 配当+優待のハイブリッド銘柄
近年では、配当も優待も両方提供している企業も増えており、そのような銘柄を選ぶことでバランスの良い運用が可能になります。
✅ 代表例:
- KDDI(9433):配当+カタログギフト
- 日本管財(9728):安定配当+長期優待
- 花王(4452):安定感ある配当+優待あり(条件あり)
▶高配当銘柄と株主優待銘柄を「併用」するのもおすすめ
どちらかを選ぶのではなく、投資資金を分散して両者を保有する戦略も非常に有効です。たとえば以下のように目的を分けてポートフォリオを組むとバランスが取れます。
| 用途 | 銘柄タイプ | 例 |
|---|---|---|
| キャッシュフロー確保 | 高配当株 | 三井住友FG、伊藤忠商事など |
| 日常生活の節約・楽しみ | 優待株 | イオン、オリックス(旧制度)など |
| 安定成長と両取り | 配当+優待株 | KDDI、日本管財など |
このようにして投資を「目的ごと」に分けることで、精神的にも安定した長期運用が可能になります。
▶投資スタイルに応じて使い分けよう
| 投資スタイル | 向いている銘柄 |
|---|---|
| インカムゲイン重視(配当で生活) | 高配当銘柄 |
| 生活の中で投資を楽しみたい | 株主優待銘柄 |
| 安定性と楽しさのバランスを取りたい | ハイブリッド銘柄 |
投資の目的やライフステージによって、どちらを重視するかは変わってきます。最も重要なのは、自分の目標に合った選択をすることです。
▶「選ぶ」のではなく「使い分ける」
高配当銘柄と株主優待銘柄を対立させて考えるのではなく、「目的によって使い分ける」「資産の一部ずつに振り分ける」といった考え方が、実は一番賢い選択です。
- 今は優待重視 → 生活に楽しさを
- 将来は配当重視 → 老後資金を構築
このようにライフプランに合わせて柔軟に投資スタイルを変えていくことが、長期で成功する鍵になります。
10. まとめ
ここまで、高配当銘柄と株主優待銘柄の違いについて詳しく見てきました。それぞれに異なるメリット・デメリットがあり、どちらが優れているとは一概には言えません。大切なのは自分の投資目的やライフスタイルに合った選択をすることです。
以下に、これまでの内容を簡潔にまとめてみましょう。
▶高配当銘柄の特徴まとめ
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| メリット | ・安定した現金収入が得られる ・増配による収益アップが期待できる ・長期保有による複利効果が大きい |
| デメリット | ・景気後退時に減配のリスクがある ・株価上昇はあまり期待できない場合もある |
| 向いている人 | ・FIREを目指す人 ・不労所得を得たい人 ・老後の資金を構築したい人 |
▶株主優待銘柄の特徴まとめ
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| メリット | ・商品やサービスを受け取れる楽しさ ・生活費の節約に役立つ ・投資初心者に親しみやすい |
| デメリット | ・制度変更や廃止のリスクがある ・現金収入ではないため使い勝手が限られる |
| 向いている人 | ・投資を楽しみたい人 ・優待品を日常生活に活かしたい人 ・初心者や家族で投資したい人 |
▶選ぶ基準は「目的」と「ライフステージ」
高配当銘柄と株主優待銘柄は、それぞれが異なるリターンの形を持っています。現金による「即効性」が欲しいなら高配当銘柄。生活の中で「実感とお得感」が欲しいなら株主優待銘柄。どちらが合うかは、あなたの「投資目的」によって変わります。
例:
- 30代のうちは株主優待で楽しみながら投資
- 50代以降は配当金で生活の足しに
- 全体の50%は高配当、30%は優待、20%は成長株といったバランス投資も◎
▶今後の投資判断で意識したい3つのポイント
①自分の目的を明確にする
「何のために投資するのか?」を常に意識しましょう。生活の足し、老後資金、趣味の一環など目的によって最適な銘柄は変わります。
②情報収集と分散投資を徹底する
企業の業績や配当方針、優待制度の変更リスクを把握することが大切です。また、複数銘柄に分散してリスクを抑えるのが基本です。
③NISAや税制面も活用する
2024年から新NISAがスタートし、非課税で配当や優待が受け取れる制度がより充実しました。長期保有を前提に、こうした制度も積極的に活用しましょう。
▶まとめ
株式投資には多様なスタイルがありますが、「高配当銘柄」も「株主優待銘柄」も、日本人の投資スタイルにとって非常に人気のある選択肢です。
大切なのは、自分にとって無理なく継続できるスタイルを見つけること。無理にどちらかに偏らず、目的とライフスタイルに応じて柔軟に組み合わせることで、投資はより豊かで充実したものになります。
今後も制度変更や市場環境の変化に柔軟に対応しながら、あなたにとって最適な「資産形成のかたち」を築いていってください。

