QYLD(Global X NASDAQ 100 Covered Call ETF)は、高配当に注目する投資初心者やインカム重視の投資家に人気です。
本記事では、QYLDの特徴やメリット・リスク、最新の配当実績、他のETFとの比較を通じて、「このETFをポートフォリオに加えるべきか」を判断するための情報を丁寧に解説します。
今回の記事はこんな方にオススメ
- 高配当ETFに興味がある人
- QYLDのメリット・デメリットを知りたい人
目次
1. QYLDの特徴
▶基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Global X NASDAQ 100 Covered Call ETF |
| ティッカー | QYLD |
| 運用会社 | Global X Management Company |
| 設定日 | 2013年12月 |
| ベンチマーク | CBOE NASDAQ-100 BuyWrite V2 Index |
| 経費率 | 0.60% |
| 分配頻度 | 毎月 |
| 主な投資対象 | NASDAQ 100指数構成銘柄(アップル、マイクロソフト等) |
| 為替 | 米ドル建て(為替ヘッジなし) |
QYLDは、NASDAQ 100指数を構成する銘柄(アップル、マイクロソフト、アマゾンなどの大型ハイテク株中心)を保有しながら、同指数のコールオプションを毎月売却(カバードコール戦略)して運用します。
▶カバードコール戦略の特徴
①株価上昇時の値上がり益をある程度放棄する代わりに、オプションプレミアムを収益として獲得。
②上記により配当利回りが高まり、株価変動の影響を部分的に緩和。
③ただし、大きな株価上昇局面では利益が限定されるのが弱点。
▶為替リスク
QYLDは米ドル建てで運用されるため、日本から投資する場合はドル円の為替変動がリターンに影響します。円高時には円換算での資産価値や分配金が目減りします。
2. QYLDのメリット
▶高い分配金利回り
最新の年間配当利回りは約13.3%と非常に高水準です。例えば1,000万円分投資すれば、単純計算で年間130万円超の分配金が見込めます(税引き前)。
▶毎月分配型で安定収入
多くのETFは四半期ごとの分配ですが、QYLDは毎月分配です。家賃収入のように定期的にキャッシュフローを得られるため、配当生活を目指す投資家や退職後の資金運用に向いています。
▶大型ハイテク株への間接投資
NASDAQ 100指数は世界を代表する成長企業で構成されます。QYLDを通じて、直接株を買わずともこれら企業に分散投資できます。
3. QYLDのデメリット・リスク
▶値上がり益が限定される
カバードコール戦略の性質上、株価が大きく上昇してもその利益をフルに享受できません。特に強気相場では他の成長株ETFに劣後します。
▶株価下落時の影響
オプションプレミアムが収入源とはいえ、市場全体が大きく下落すれば基準価額も下がります。2022年のハイテク株急落時には株価が大きく調整しました。
▶税務上の不利な面
QYLDの分配金の多くは非適格配当(Non-Qualified Dividend)として課税されます。米国在住者の場合でも高い税率がかかり、日本の投資家も二重課税の影響を受けやすいです。また、一部は「Return of Capital(元本払戻)」として扱われ、取得単価が下がり、売却時の課税が増えることがあります。
▶為替リスク
円高が進むと、ドル建て分配金を円換算したときの金額が減少します。長期保有の場合は為替ヘッジなしのリスクを理解する必要があります。
4. QYLDの最新配当実績
・2025年7月分配金:$0.1653(権利落ち日:7月21日、支払日:7月28日)
・年間分配金総額(直近12か月):$2.24
・年間配当利回り:約13.36%(2025年8月時点)
過去5年間の配当履歴をみると、年間利回りは概ね10〜13%の範囲で推移しています。2022年の市場下落時も分配金は継続されましたが、金額は若干低下しました。
5. 他の高配当ETFとの比較
| ETF | 戦略 | 分配金利回り | 値上がり余地 |
|---|---|---|---|
| QYLD | NASDAQ100カバードコール | 約13% | 制限あり |
| XYLD | S&P500カバードコール | 約11% | 制限あり |
| RYLD | Russell2000カバードコール | 約12% | 制限あり |
| VYM | 高配当株投資 | 約3% | 高め |
| SPYD | 高配当株投資 | 約4.5% | 高め |
| HDV | 高配当株投資 | 約4% | 高め |
【ポイント①】
高配当狙いならQYLDは最上位クラス
【ポイント②】
値上がり益も狙うならVYMやHDVが有利
【ポイント③】
カバードコールETFは市場上昇局面では見劣りする可能性がある
6. QYLDが向いている人・向いていない人
▶向いている人
①毎月安定したインカム収入を重視する人
定期的なキャッシュフローを確保したい退職後の生活資金や、副収入を求める人に適しています。
②株価の値上がり益よりも配当を優先する人
キャピタルゲインよりインカムゲインを重視する戦略と相性が良いです。
③大型ハイテク株に間接的に投資したい人
NASDAQ 100構成銘柄(アップルやマイクロソフト等)に分散投資できます。
④為替リスクや税制面を理解している人
米ドル建て商品のため、為替変動や非適格配当・Return of Capitalなど税務上の特徴を理解できる人が望ましいです。
▶向いていない人
①株価の成長益を重視する人
カバードコール戦略では株価上昇の恩恵が制限されるため、長期の株価成長を狙うならVYMやQQQなどが適します。
②為替変動に不安がある人
円高時には配当額も資産額も減少するため、為替リスクを避けたい人には向きません。
③分配金の変動が気になる人
市場環境によって分配金額が上下するため、安定額を必ず受け取りたい人には不向きです。
④税制優遇のある国内商品を優先したい人
NISA枠で投資可能な国内ETFや高配当株を優先する場合、QYLDは必須ではありません。
7. まとめ
QYLDは「高配当・毎月分配・大型ハイテク株投資」という魅力的な特徴を持つ一方、値上がり益の制限・為替リスク・税務上のデメリットといった注意点もあります。
もしポートフォリオに組み込む場合は、全額ではなく一部をQYLDでインカム補強、残りは成長株や他ETFで分散する方法がバランスの取れた運用になります。